元島生

文章・音源・詩・活動・いろいろ

意味

意味

 

今日は遠足で、動物園に行くのだという

茶臼山?」

「うん。そうだよ」

5歳になる三女は、納豆をかき混ぜながら頷いた

 

茶臼山動物園は、7年か8年前に行ったきり

まだ、てくてく歩きの長女と

青葉のような夫婦

チューリップ花壇の前で、写真を撮った

あれから、押し流されるように、人生は流れ

かつて住んだこの土地に、また流れ着いたのだ

 

「行きたいね」

妻が微笑む

「うん」

僕は梅干に手を伸ばす

 

流れた時間は、二人の間に言葉を減らし、意味を増やした

 

昔行ったね 懐かしいね 写真撮ったね あれからいろんなことがあったね また行きたいね

 

ご飯と味噌汁と梅干と納豆

あの頃と変わらない朝食を食べながら

僕は自然にその意味を汲む

 

「狸がいるかもよ」

「違うよ、猿がいるんだよ。先生が言ってたもん」

「じゃ、ウキッて言ってかみつくかもよ」

娘が笑う

僕がふざける

妻が微笑む

鳥の鳴き声がする

 

長女と次女がそろそろ学校へ着くころ

初夏の風はまだ少し冷たい

縁側で洗濯物が揺れている

誰も気が付かないほどに

何気なく 小さく  揺れている