元島生

文章・音源・詩・活動・いろいろ

場面

鬼 「鬼になる気はあるの?」 唐突に言われ、僕は箸を置いた。 平和な朝食中に、苦難はやってきたのだ。 人生には、鬼にならなければならん時も、あるのだろう。 腹を括り、妻を見据えた。 「何があった」 そう聞くと 「ゆいが節分の豆まき楽しみにしてるの…

見る

雷が鳴っていた今にもざーと来そうな街僕は駅に急いだ ギリギリ駅舎に滑り込みホッとして 灰色の雲を 見あげたその時 はっきりと僕の世界は変わったまるで磨りガラスのメガネを外したかのように その時 雲がしっかりと見えたそれは長く忘れていた感覚だった…

意味

意味 今日は遠足で、動物園に行くのだという 「茶臼山?」 「うん。そうだよ」 5歳になる三女は、納豆をかき混ぜながら頷いた 茶臼山動物園は、7年か8年前に行ったきり まだ、てくてく歩きの長女と 青葉のような夫婦 チューリップ花壇の前で、写真を撮った…

ある重み

1月5日 新年最初の仕事は広島。 休んだ後の仕事は、気がつくことが増える。 忙しいと荒む。気づくこと自体が減る。 別世界に身をおく時間が、大事なのかもしれない。 今年は、面白いことをしたい。 つまらないことはしたくない。 夜は、ゲストハウスに泊ま…

神は死んだか

1月2日 映画もののけ姫を、導入部分だけ観る(子供らが怖がるので中断) 恨みを持ったことで、祟り神という魔物になってしまった猪が、人間の村を襲う。 主人公のアシタカは、敬意をもった言葉で猪を鎮めようとするが、猪は止まらず、やむなく矢を射って殺…

不器用な雪掻き道

僕の家に隣接する古い長屋には、高齢者の方が、数人暮らしている。 みんな、とてもいい人達で、我が家の子どもたちの、容赦ない喧噪にも「元気になるよ」と言ってくれ、助かっている。 家に一番近い部屋の、一人暮らしのおじいさんとは、窓越しによく話をす…

それだけ

いつも玄関先でやる七輪を、今日は、道路側に出してみた。通り掛かりの人が、話していったり、炭を持ってきてくれたり、芋を持ってきてくれたり。たくさん笑顔が通っていった。子どもたちが、芋をくれたご近所さんの家に、お返しを届けたいと言い出し、届け…

夜の自転車

頭が痛い。 せっかくの休日を、一日寝て過ごした。 もう2~3週間、ぐずぐずと体調が悪い。 昨日はなんとか持ち堪えたが、今日はダメだった。 目覚めの瞬間に、ダメなのが分かった。 気がダメなのだ。 先週、九州は豪雨で、大きな被害があった。 朝、テレビ…

幸せな会話

「早くー遅刻するよー」「ちゃんと締めとかなきゃ猫入るからさ」「ははは、泥棒じゃなくて?」 「今日ね、箱アイス6割引だったのよ。奇跡じゃない?」「奇跡ではないでしょ。値引きでしょ」「いや奇跡だなー」

太陽はおなかの中

今日は雨だ。 ちゃーちゃん(のはら)を、幼稚園に送る車中での会話が、何やら心に残るものだったので、書いておきたい。 「ちゃーちゃん、今日は雨だねー」 「雨ってやさしいよ」 「どうして?」 「お野菜を育ててくれるんやよ」 「そうか。じゃ雷は?」 「や…