元島生

文章・音源・詩・活動・いろいろ

人間

演劇つつじの乙女レビュー

三条会の「つつじの乙女」は「観てきた」というより「行ってきた」というのが近い。 夕暮れの冷たくなる空気。色の変わっていく山々。闇に吸い込まれる声。あれから一ヵ月近く経ってしまったが、どこか遠くに行ってきたような気がしている。 三階建てのビル…

優しさの行方

ミキの入院。病院に泊まっている。 エアコンの無い家から来たので、病院なのに凍死しそうだ。 同室のおばあちゃんは、86歳。1人ぼっち。 ミキのことを、いい子だ、いい子だと何度も言う。ミキの不安を和らげてくれる。 ミキは耳の手術前で、あまり聞こえてな…

お前が目を覚ませ

紅葉の効用は、光陽を航洋することによる、高揚。賞賛を乞うよな文章にて、ご機嫌を伺おうというわけだが、勝算はない。許しをこそ、請いたい。 韻を踏むというより、漢字で暇を踏んでいる感じ。暇なのかと言われれば、やることは目の前に山積しているのであ…

枯渇

通勤電車。帰り。30分間。じっとしていられないような、いたたまれないような。 疲れからか。 こういう時がよくある。 そんな時は、思いつくままに何か書いてみる。 「枯渇」。ただ浮かんだに過ぎない。 渇き枯れた状態。すべて無くなった状態。 しかし、…

静かな言葉

嘔吐 台所でははらわたを出された魚が跳ねるのを笑ったという食卓ではまだ動くその肉を笑ったというナチの収容所では足を切った人間が切られた人間を笑ったという切った足に竹を突き刺し歩かせてころんだら笑ったというある療養所では義眼を入れかつらをかむ…

鬼 「鬼になる気はあるの?」 唐突に言われ、僕は箸を置いた。 平和な朝食中に、苦難はやってきたのだ。 人生には、鬼にならなければならん時も、あるのだろう。 腹を括り、妻を見据えた。 「何があった」 そう聞くと 「ゆいが節分の豆まき楽しみにしてるの…

苦しみから始める

女性被害者とバックラッシュ 最近、気になっていることがある。 女性の権利運動に対する攻撃や、レイプ被害を訴える女性を非難するという人たちの存在。 人権運動という視点で見れば、いわゆるバックラッシュ。 それは、人権運動には付き物で、歴史上必ず起…

信仰

僕は女性を非難したくない 例え自分がみじめな男だと気づいてしまっても 僕は補助で暮らしている人を非難したくない 例え自分が理不尽な目にさらされていても 僕は誰かに出ていけと言いたくない 例え自分が追い出される恐怖の中に生きていようとも 僕は誰か…

そうまでして

そうまでして自分を守らなければならないのだ 在日だ、安部だと絶対悪を作り上げてまで レイプを告発した勇気ある女性を誹謗中傷してまで そうまでして自分を肯定しなければ、自分が社会の中の意味ある一人だと思えないのだ 結婚できない自分 社会的地位が低…

友人からの手紙

新しいCDありがとうございました。 自分の心情に馴染んでくれる曲ばかりで、いつも大切に聴いています。 こちらの方は相変わらずですが、最近も妻が仕事を終え、家に帰ってきて辛い思いを抱えながら話をする時があります(彼女は彼女なりの現実をサバイヴし…

動的平衡

僕らは、ある流れの中で生きている。 生き物の細胞は常に生死を繰り返し、半年もすれば、すべて入れ替わってしまう。 細胞をさらに細かくしていくと、原子というものになり、ものを食べると、その食べ物を構成する原子が、即座に身体を構成する一部となる。 …

不器用な雪掻き道

僕の家に隣接する古い長屋には、高齢者の方が、数人暮らしている。 みんな、とてもいい人達で、我が家の子どもたちの、容赦ない喧噪にも「元気になるよ」と言ってくれ、助かっている。 家に一番近い部屋の、一人暮らしのおじいさんとは、窓越しによく話をす…