風
誰かの風に触れた時
僕の中にも風が起こる
寄り道
ちょっと寄り道をした
屋上から夕陽を見た
その時に僕は見つけた
柔らかく光る 屋根の間に
風に揺れる 娘の髪に
幼い頃
祖父が 電車の通る時間に 線路沿いまで連れて行ってくれたこと
両親と街にウインドーショッピングしに行く予定だったのに
時間がないから今日はいけないと言われて たくさん泣いたこと
そういうことが思い出される
僕は電車を見たかったのではなかった
街に行きたかったのではなかった
知っていたのだ その時間の中に在るものを
祖父と見たものを 両親と見たかったものを
僕は今 夕陽の中に見ている
いつのまにか生活の中に隠れてしまったそれを
世界の中に埋もれてしまったそれを
幼稚園の帰り道
「屋上に行きたい」
娘はたちはそう言ったのだった
娘たちもまた知っているのだ
世界の夕暮れを ただただ照らす 光の中で
これより大切なことは あまりないと思った
まだ半分も終わらない
まだ半分も終わらない
作詞作曲 元島生
ここは動物園なのかはたまた閉鎖病棟なのか
問うことは出来そうだか
それに意味があるとはあまり思えません
逃げてしまえればと思いながら今日もホームレスを見下して
見ぬ振りでお金を貰いに電車にのる
優しい人々はどこに
発表したところを教えて
優しい気持ちや 嬉しいことや
安らかな時間が 苦しいだけになっていく
結論を教えて
方程式にあててもらいたい
ふと見つけた 四つ葉
祈る事さえ出来ずにいます
酔っ払いをのせた電車
自殺志願者の静かな声だった
カゴの中のインコと僕の目が同じだ
まだ半分も終わらない
何かを変えるべきだった
誰かの幸せを
願うようなひとときと
おだやかな時間と
忘れる能力と
分からなくなってしまいたい
空はどこに
答えはどこに
急に雨が降り出した
洗濯物今日も出しっぱなしだ
また隣の部屋では女のなき声がする
川は酷い匂いだ
ネオンが光っている
子どもたちが笑っている
子どもたちが笑っているふりをしている
老婆が下を向いている
その横を邪魔そうに何百人が通り過ぎる
花が綺麗に飾られている
花が綺麗に咲いているふりをしている
電車はスピードを今日も上げる
ビルも人もぜんぶ後ろに消えてった
賑やかそうな街だ 楽しそうな街だ
子どもが笑っている
君に会いたい
君に会いたい
君に会いたい
吉田夫婦に捧ぐ唄
友達の結婚式のために作った曲
幸せな始まりの時 浮かぶのは幸せな終わりの光景ばかりで 例によって 暗い曲が出来た
祝いの席の温度を下げてしまって なんとなく申し訳ない気がしてたけど
僕の次の人たちが ドリカムを合唱してくれて とても助かった
動画は富山のシェアハウスでのライブの時のもの
吉田夫婦に捧げるうた
作詞作曲 元島生
僕たちはいつか 死んでしまうだろう
分からない事を たくさん残して
もしも僕たちに 子どもが生まれたら
大切にしよう 大切にしよう
もしも僕たちに 子どもが出来なくても
大切にしよう 二人の時間を
大切なものを たくさん残したまま
僕たちはいつか 死んでしまうけど
縁側で君と 笑った時間を
僕は死ぬその時 何度も 思い出す
10000年前からの手紙
100年前 海を越え 半年かかって届けられた手紙は
今朝 僕の右手の中で送られて コーヒーを淹れ終わるより早く返事が来た
1000年前 竹から生まれた美しい娘が帰っていったという美しい月には 何もなかったとTVは告げた
僕は今 縄文土器を手に持っている
10000年前から届いた手紙は冷たくてざらざらしている
同じように太陽は昇って 同じように月を見たのだと
同じように湯気は揺れて 同じように雲は流れていたのだと
朝の澄んだ空気や 染み込むような夕焼けや
やさしいこどもの寝息や 痛いほど冷たい水や
豊かな実りと 厳しい冬と
古い友人の手によって伝えられた近況を
僕は今朝 右手の中に受け取った
何もかも新しくなる世界に
風邪をひいた
僕はヘッセを読んでいた
子どもの精神世界を犠牲にして 世界は先を急いでいる
100年前の警告は それさえも消費され消えていくようだ
難しい顏をしていただろうか ページをめくっていた僕のそばに
のはらがやって来た
パパ風邪ひいたからかわいそう
そう言って 最近言葉の増えた3歳児は僕の布団に入り そのまま寝入ってしまった
世界を守るやさしさを ぬくぬくと布団に宿しながら
何もかも新しくなる世界に それでも変わらぬ寝息を
ただ すやすやと立てながら